Vol.13  ~トルコ軍部クーデタは何を語る~

Vol.13

【参考サイト】http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16HA5_W6A710C1000000/

 

世界の歯車が狂い出している。

南仏ニースで起きたトラックテロは、単独犯ではあったが、結局失業を繰り返した人間の闇がISに傾斜していた。このことは、先日バングラデシュで起きたテロ事件の犯人グループもしかり。彼らは裕福な家で育ち学歴があったにもかかわらず、就職できず社会に取り残された人間の闇があった。そして、過激思想に傾斜した。

また、今日イスラエルのテルアビブでパレスティナ人の男が米観光客を含む20数名を無差別に殺害する事件起きた。詳しくは分かってはいないが、排他的な過激思想の影響を受け、衝動的に起こした行動のようだ。
「心の闇=不満ならばやればいい」
15日深夜から16日未明にかけて、トルコで軍部の一部がクーデタを起こした。現在はほぼ鎮圧されたが、一般人50名ほどを含め300名近くが殺害された。未だ軍上層部メンバーが拉致され行方不明であり、軍艦一艘が乗っ取られたままらしいが、イスタンブルなどの主要都市は落ち着きを取り戻しているようだ。
軍部クーデタ…
日本人にとって、全く知らない言葉ではない。

隣国韓国では1961年に現大統領の父朴正熙が軍部クーデタで政権を握った。
日本人が良く訪れるタイでは定期的と言って良いほど軍部クーデタが良く起こる。
ゆきおが個人的に繋がりのあるエジプトではもともと軍部が政権を掌握しているので民主化運動が軍部に潰されるパターンになる。

少し古い話、1936年に起きたニ・二六事件。結局失敗に終わったが、一部の青年将校のクーデタで、首相岡田啓介を除く、沢山の閣僚が暗殺された。
さて、今回の主人公はトルコ軍。これは、今紹介した国々の軍とは少し様子が違う。

もともと、トルコ共和国を建国したケマル=アタテュルクは第一次世界大戦でイギリス艦隊を撃破した英雄的な軍人であった。また、彼は政教分離の世俗主義・民族主義を唱えたため、近代化を望む国民の多くの支持を得ることができた。

さらに、現在のトルコ軍はNATOで2番目の兵力であり、その基盤に男子国民皆兵制がある。よって、軍隊自体がかなり国民に近く、その意思を反映していることが多い。

このことは、過去に1960年と80年、軍部クーデタが成功していることで納得できる。80年のクーデタでは期限付きでアメリカも支持、新憲法を制定し、83年にはきちんと民政移管した。
今回のクーデタの背景には、イスラーム主義へ傾斜するエルドラン大統領と、過去の歴史から国民の意思を反映した世俗主義を代表する軍部の対立がある。

しかし、軍部上層部のメンバーがクーデタの首謀者ではないようなので、今回は、腐敗や治安の悪化が現政権の責任とした正義感溢れる若い将校たちの反乱か、エルドラン大統領に個人的な憎しみや恨みのある人間が軍部の一部を通じて起こさせた反乱か。

いずれにせよ、用意周到だとコメントする者もいるが、トルコ軍が本気でクーデタをすれば成功するはずなので、「不満ならばやればいい」的な面を強く感じる。ISやアサド・シリア軍・クルド過激派との戦いに明け暮れるトルコ軍の隙を突いた感は否めない。
この事件から我々が知り得ることとは何か?

決してトルコだから起きた話ではないということ。再び内戦を開始した南スーダン、北アイルランドやアルザスにもキナ臭い動きがある。
今、世界は「不満の渦」から抜け出せない。

同様に「不満の渦」にあった18世紀末~19世紀半ばの欧米では「革命」が繰り返さ、沢山の人間が死んだ。また、20世紀前半は突如台頭した「民族主義・国家主義」が世界を圧巻し、未曾有の死者を出した世界大戦を引き起こした。
今ある世界の不安に有効な対策などはない。ただ、歴史を学べば、必ずそこに渦を変えるキーが隠れていると私は思っている。


 

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