参考URL http://www.news24.jp/articles/2017/06/26/10365271.html
24日(土)、2017年のラマダン(イスラーム曆の九の月:断食の月)が終わります。ラマダン中に行った善行に対する神からの評価は普段よりも高いとされています。テロ組織のリーダーらはそこに目をつけるのです。ザカートと呼ばれる喜捨(お恵み)の金額は高くなり、強力な武器へと代わります。異教徒を殺すことを善行とするジハードと呼ばれる聖戦は、より強く正当化されます。それが大規模なテロをラマダン中に多発させる理由になっているのはご存じでのことでしょう。…
とうとう、2014年に建国されて以来破竹の勢いで領土を拡大させていたダーイシュ(イスラーム国)も風前の灯となりました。イラクの拠点としていたモスルは陥落寸前、シリアの拠点であり首都とされたラッカはすでに機能を失っています。
最高指導者とされていたバクダーディー氏は、数日前の爆撃により死亡したと発表されました。ダーイシュ(イスラーム国)は実質上滅亡したと言って良いでしょう。
しかし・・・
この実態がなくなった組織は、指導者や主体を変え、インターネットという仮想世界の中で行き続けるでしょう。暫くはナリを潜めているでしょうが、しばらくすると再び現れます、必ず。。しかも、繰り返し成功すれば、それは再び組織化され、「後ダーイシュ」となるのです。
なぜ、テロはなくならないのでしょうか?
イスラーム国の声かけに乗ったとされるテロは、自分が置かれた社会への不満、満たされない欲求への不満、閉塞感に苦しむ若者たちの行き所のない不安が、自分を孤立させている社会への攻撃へと変わったモノだからです。
ムスリムはヨーロッパ社会の成長の中で取り残されてきた歴史がありました。だから、ムスリムの多いベルギーやフランス・イギリスでテロが相次いだのです。しかし、取り残されているのはヨーロッパだけのことではありません。また、社会に不満を持つ人間はムスリムだけではないということなのです。
世界が間違えてはいけないこと。これは、イラク・シリアの混乱の中で生まれた殺人誘発組織がたまたまムスリムだっただけのこと。
どこの国の指導者も、テロが起こればすぐダーイシュのせいに。自国の移民や失業に対する無策を棚にあげてです。このテロ組織は、依然あった国際テロ組織「アルカーイダ」とは全く違うモノです。ダーイシュはそれ自体が内戦地域以外で戦闘するわけではなく、彼らはただの誘発材にすぎません。その根本は、各国の社会システムの不満を払拭できる政治力の無さ、また変化の激しい若者の心に国家政策に携わる学歴の高い恵まれた環境で議員になった政治家たちがついて行けていないことにあるのです。
テロ組織のせいにする前に、複雑に病んでいる若者たちの声を聞き取れる社会システムの構築が急務となることを忘れてはいけません。
テロは決してなくならないどころか、形を変え、場所を変え、不信や不満が蔓延る若者の多い地域に生まれるのは自然の摂理となっている世の中だからこそ、この「イスラーム国消滅」に傲らないで欲しいと強く思うのです。
by 世界史講師 佐藤幸夫
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